競馬にはNRAが運営する中央競馬と、地方自治体が運営する地方競馬の2種類がある。世間で話題になる中央競馬は、近年若年層や女性客の取り込みに成功し徐々に開かれた娯楽としてその地位を確立している。しかし地方競馬には未だディープな世界が広まっている。今回はその中でも1番ディープだと言われている、樺太郡の真岡競馬場を取材した。
豊原市から鈍行列車で揺られ真岡町へ。製紙業に従事する関係者が多く住んでいることから「紙の街」として知られる真岡町は、競馬ファンからも「(馬券が)紙の街」として有名だとか。
駅から出る送迎バスを降りると、確かに紙の街らしく、競馬場の前にはハズレ馬券が散乱している。真岡競馬は比較的穴馬が出やすいことで知られており、常に殺気だった空気が競馬場に漂う。
「にいちゃん何買うの⁉︎」今時珍しい電光掲示板の出走表を眺めていると初老の男が話しかけてきた。真岡に在住で、20年以上ここで競馬をしているY谷さん(仮名)によると、ここの予想のコツは「ない」という。
「何買っても当たらないし当たる時は当たる。もう迷ったらここに着いた時の電車の時刻表とか使え」というY谷さんに従って、1-4-6で三連単を購入。Y谷さんは「お前それ来たら864倍や、多分来ねえな」と吐き捨てて、8番からの馬単流し。ならアドバイスするな…。
レーススタート。Y谷さんの買った8番ルエルニオスが中盤まで3馬身差で進めるも、第3コーナーで失速。ドベ人気のトゥエンティーが外から一気に勝負を仕掛けた結果、まさかの1-4-6でゴールイン。
レース後、Y谷さんに目をやると「あり得んだろ、絶対ヤネ(ジョッキーのこと)がゴミなんだよこれ…八百長だろ(この場合八百長なことはない)」と呟きながらパドックへ向かった。
100円を86400円に増やし、手が震えつつも取材に集中。真岡競馬場内の食堂に向かうと、ここの名物であるカニ汁をワンカップで煽る。悲喜交々の地方競馬場で飲むカニの風味は、北州の市場じゃ味わえないような、どことなく尖った味がした。
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