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[日本徒然紀行]冷涼のやませに抱かれて③


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 広中さんのタクシーに乗り込み、次は彼がお勧めする葦毛崎の展望台へ。まるでアニメ映画に出てきそうな海沿いと田舎の原風景を楽しんでいると、これこそまさに映画の世界にあるような、海岸沿いから突き出た石造りの展望台に到着する。

 展望台前にあるパネルを読むと、どうやらここは江戸時代から御一新の時代にかけて異国船の監視をしたり、戦時中には日本軍が利用した軍事施設の名残。そのためここからの眺めはとても素晴らしく、天気が良ければ海北州の海岸も見えるという。


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 タクシーに戻り今度は種差というところへ向かう。道中少し速度を緩めた広中さんが「ここに牧場があるんですよ」と。どうやらここは馬の放牧が行われており、特にこの牧場は競馬の競走馬の育成なども行なっているという。「この地域での馬の歴史はとても古いんですよ。先ほど見てもらった葦毛崎の葦毛は南部馬という芦毛(毛が灰色)馬の放牧をしていたことに由来します」と教えてくれた。


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 到着した種差海岸はとても芝生が綺麗な自然公園になっていた。2011年の大震災で多くの被害を受けた東北地方。種差海岸は三陸地域の一つで、復興公園として整備されて今の姿になったという。


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 芝生から道路を隔てた先にある新築の木造建築の建物は、この種差海岸や地域の特色を紹介するインフォメーションセンター。まだ完成してから5.6年ということもあって、綺麗で快適な館内でこの地域の文化や種差海岸の生態系について学ぶことができる。


 センターを出てタクシーに戻ろうとした刹那、カラッとした涼しい風が通り過ぎる。「いやあ、やませだねえ」と広中さん。やませに抱かれた奥羽の夏はとても心地の良い夏だ。(了)

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