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[第4回]微睡の舷窓から


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 「花火があがる空の方が町だよ」とは 尾崎放哉が詠んだ俳句の一つである。飾り気のない自由律俳句という存在は、なんとなく華やかな花火とは対極のような気がしてとても面白い。


 さて、というわけで暦の上で秋も始まり、あのうだるような暑さもそろそろ鳴りを潜める時期になってきた。私は毎年このくらいの時期になると、電車で10分ほど揺られて、湘南市で行われる花火大会を見に行くのが習慣になっている。

 もともとこの花火大会は湘南市が生まれる前、まだ平塚市であったころから戦後復興の一環として行われていたのだが、湘南市になってからは相模川を挟んで東岸西岸で毎年交互に実施されている。私はもともと平塚に住んでいた時期もあったので、平塚側で行われる年は特に楽しみだ。

 今年はちょうど平塚側だったので、駅前で缶ビールとちょっとしたつまみを買い、大会会場の新港から少し離れた海岸で見ることにした。やはりというか、この場所は明らかに付近に住んでいるだろう地元住民が多い。観光客は大体屋台とかが出ている新港側でっ見るものだとこの辺りの相場で決まっているのだ。


 午後7時から始まった花火は海面を明るく照らし、見ている人の人影を砂浜に映しこむ。その様子を尾崎放哉が見ていたらきっと「花火があがる空の方が海だよ」と言ったことだろう。ビール缶に汗が浮き上がるのを感じつつ、晩夏を楽しんだ。

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