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[第5回]微睡の舷窓から


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 ”積ん読”という言葉がある。読んで字のごとく「本を買うはいいが積んでしまって放置する」というナウい語だ。文章を書いて金を貰うものとしては、自分の本を読まないで積まれてしまうと少し困るが。いかんせん自分自身がこの積ん読をしてしまうので、読者の皆様にこう高説を垂れることはできない(そもそも読んでくれる時点で積んではいないのだろうが)。


 しかし思い返してみれば、学生時代──具体的には時間に余裕があって、かつスマホが普及するまで──はそこまで本を積む習慣はなかったように思う。なぜなら、学生時代のちょっとした隙間時間や通学途中などは常にカバンの中に忍ばせていた小説を一冊は読んでいたからだ。なんとなくだが、スマホが普及してからというものの、小説を最後まで読み切る集中力がなくなったように思える。

 集中力の問題は何も小説、本に限ったことではない。ここ最近は気になるテレビ番組でさえも録画して満足し、一向に見ようという気力が起こらない。ただいったん覚悟を決めて見始めてしまうと案外最後まで見れるものであり、特に映画などはなんだかんだ毎回最後までしっかり見ているものの代表例だ。


 しかしこう考えてみると、現代社会はなんとも積むものが多い社会になっている

ように感じる。情報化が進み、昔に比べ新たな媒体が誕生して、生活が便利になっても、何かと積んでしまう人の生活は一向に便利にならないどころか、むしろ積むものが増え続ける始末だ。

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