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執筆者の写真くま ぼん

[第6回]微睡の舷窓から

 「卯年大吉!」2023年は旧正月を迎えた私のスマートフォンに、友人らがいるグループの通知が溢れんばかり入ってくる。大学を長征で過ごした時分からの付き合いは未だに途絶えることはない。


 日本人は関係が希薄になると、交友関係も途絶えがちのように感じるが、華国人はそうではない。彼らは一本のタバコから一生の付き合いを生み出すような意欲的コミュニケーションを持ち合わせる人種だと痛感した。

 華国の旧正月が終わる頃、長征に行く機会ができた。「いついつに長征に向かうから」とSNSに投稿すると、あっという間に滞在中の1人飯は全て誰かとの会食に変わってしまった。その中にはそれこそ先ほど言ったような、タバコ一本からはじまった付き合いの友人もおり、彼らが何故そこまで交友関係にこだわるのかを留学当初はよく考えたものだ。


 長征に向かう機内で、まだ華国語すら喋れない中で留学したあの日を思い出した。ユーラシア大陸が見え、社会主義リアリズムに裏付けられた集合住宅の奥にはひたすら荒涼な大地が広がっている。かと思えば原色で彩られた無数の直方体の住宅が無秩序に散らばっている。茶色の大地が静と動を包み込むように私を歓迎している。

 当時は地平線の向こうまで続く大陸を眺め、いずれはこの国を理解したいと強く思った。しかし今その大地を眺めても、私は10数億が自由にひしめき合うこの荒涼な大地の何一つも理解していないことに気づいた。──

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