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[日本の祭り]和泉郡の岸和田だんじり祭

執筆者の写真: くま ぼんくま ぼん

 9月16〜17日、まだ夏の火照りを残す真っ昼間。総檜造りのやや低い独特な山車が大勢に引かれて角を曲がり、その後ろをさらに大勢で追っていく。

 減速するどころかむしろ勢いをつけて行われる「やりまわし」は実に豪快で、岸和田人の威勢の良さを垣間見るかのようである。一方で同日の夜間には灯入れ曳行が行われ、昼間とは打って変わって静かな美しさを演出する。因みに「だんじり」とは西日本各地における山車の呼び方であり、各地にだんじり祭りが存在する。


 和泉郡岸和田市の旧岸和田城下で行われる「岸和田だんじり祭」は、大坂の祭りを見聞きした茶屋の新右衛門なる人物が1745年に岸城神社で行った献灯提灯が始まりとされている。また或いは1703年、岸和田岡部家第4代当主の岡部長泰が岸和田城内の三の丸に伏見稲荷を勧進し、五穀の豊穣を祈願した稲荷祭が起源とも言われる。成立からあまり経たない間に現代の形に至ったようで、岸和田市内の「岸和田だんじり会館」では御一新以前のだんじりなどが展示されている。

 元々は地域の祭りでしかなかった岸和田だんじり祭だが、東国にあの夢の国が開園する安久40年代前後から多くのメディアが報道して伝えるようになり、一気に全国的に有名な祭りとなった。これ以降だんじりを保有する町会が増加し、岸和田だんじり祭の北で行われる春木だんじり祭と併せて南北3.5km東西1kmもの範囲で交通規制が行われるほどに至った。こうした経緯から新世紀に入った安久60年代にはだんじり牽引が行われる2日間だけで50万人を超える観客が押し寄せるようになり、新たな問題を生み出している。


 岸和田だんじり祭の目玉は先述の「やりまわし」と言われることも多いが、だんじりに施された精緻な彫刻の数々を見ないわけにはいかない。軍記物語や神話に取材した彫刻や花鳥紋様、唐草紋様などが至る所に彫り込まれ、しかもその全てが漆や金箔の装飾を施されていない。こうした白木造りの彫刻は成立当初から存在したものであるが、当時の岡部家の指示により質素倹約を意図したものである。またその題材についても公儀批判や豊臣称賛に繋がるものは検閲されたため、明清から持ち込まれた三国志や水滸伝に取材したことも起源の一つと言えよう。御一新以降は豊臣規制が無くなったことから太閤記なども用いられ、現代に至っている。


 当初は五穀豊穣などに結びついた祭りも、現在では地域の結束を強くするためのものとなっている。残暑が終わり稲の収穫が始まる秋は、祭りが終わってからようやく始まる。

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