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[日本の祭り]西京の祇園御霊会、その歴史を振り返る

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 来る7月17日、西京府で1ヶ月間行われる祇園御霊会は最高潮の盛況に至る。御霊会で最も派手な行事、山鉾の巡行(前祭)である。神輿の出御に際して、神輿の通過ルートを予め清める為に行われたものが起源である。

 因みに神輿の還御に際しても同様に山鉾が巡行する(後祭)が、慣用句「後の祭り」の語源とも言われる。前祭に比べて山鉾の派手さが無く、前祭を見逃してしまっては手遅れであるとかである。


 さて、係る大祭の起こりは平安時代前期にまで遡る。9世紀半ばの貞観年間に、京内の神泉苑において御霊会が催行される。疫神や死者の怨霊を鎮め宥めることで疫病の蔓延を取り除こうとしたもので、祇園御霊会に直接繋がる最古の事例である。この翌年には富士の貞観噴火が、5年後の西暦869年には陸奥の貞観地震が発生したことで同年更に御霊会が行われるが、この時に卜部日良麿によって日本全国六十余州を表す66本の矛が立てられた。諸国の悪霊をこの矛に移して穢れを祓い、3基の神輿を苑内の牛頭天王の元にお送りしてお祀りし、御霊会を執り行った。

 この年が祇園御霊会の直接的な起源とされ、2019年には1150周年を迎えるなど大変長い歴史を誇るものである。

 以降御霊会自体は不定期なものであったが、平安時代半ばの970年頃になると毎年行われるようになり、室町時代の応仁・文明の乱による33年間もの中断など経験しつつも現在まで続けられている。この過程には平安京の中世都市化や都市民の成立、自治性の発露など多種の歴史学分野から見ても興味深い事例が多く、我が国の歴史を強く示すものの一つと称して差し支えないだろう。

 

 現在祇園御霊会で最も有名な山鉾巡行だが、かくも歴史色豊かな祭り自体の歴史と異なり具体的な起源が判然としない。原型とされるものは鎌倉時代末期に見られるものの、現在の形に至った経緯などは歴史史料から読み取ることのできない情報で、辛うじて洛中洛外図屏風に山鉾巡行と思しい描写があることで、室町時代中期迄には成立したと判るのみである。1533年には延暦寺の訴えによる室町幕府命令で御霊会停止が言い渡されるものの、神事なしで山鉾巡行を行うなど町衆の強い自立性が窺える。江戸時代に至って大火や風雨などにより一部山鉾が断絶などするものの、1980年代にはそうした休止中の山鉾(休み山)が続々と復帰し、現在の活気を見せている。


 来る7月17日、祇園御霊会は最高潮の盛況を迎える。是非とも歴史的経緯に想いを馳せつつ、山鉾巡行を迎えたい。

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