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[日本徒然紀行]冷涼のやませに抱かれて①

執筆者の写真: くま ぼんくま ぼん

 南部県北部の中心地、八戸市に接続する奥羽新幹線の八戸駅。ホームに降り立った私を歓迎したのは、太平洋から吹き付けるやませだった。

太平洋側でありながら、やませなどの環境に恵まれたこの地方は、夏にも関わらず非常に冷涼なことで知られている。例えば大江戸圏が35度以上あっても、こちらは28度程度という具合だ。


 南部県はかつて鎌倉の初代将軍、源頼朝から賜った所領を元に礎を築いた南部氏にルーツを持つ、奥地方でも有数の経済規模を有する地域だ。

「確かに八戸は産業も豊かだし、食にも恵まれている。この時期なんかはヒラガニが食べ頃でね。ここの人はよく食べているよ」と駅から市街地に向かうタクシー運転手の仲村さん。「ただ観光とかだと盛岡や津軽の方に軍配が上がっちゃうね。八戸は実をとったようなもんだよ」と皮肉混じりに笑った。

 八戸の中心街で降ろしてもらった後は、市内で観光情報などを提供する"はっち"に向かう。ここでは八戸市内や周辺の観光案内やホテル・交通手段の手配など、同地域を観光する上で必要なことを全て手配している。

 ここの一階にあるカフェで待ち合わせていたのは、南部県観光課の華谷さん。八戸生まれ八戸育ち、生粋の地元民だ。



華谷さんの案内でまず向かったのは八戸郊外にある是川というところ。ここでは国宝に指定されている合掌土偶など、日本の古代史を語る上で欠かせない数多くの発見がされているという。

是川地域の教育コミュニティも兼ねる博物館には、国宝の合掌土偶はもちろん、そのほか数多くの出土品の展示、そしてまだ発掘されたばかりの土器の整理や収集などが行われている。

「合掌土偶もそうなんですが、是川の土偶はなんとなく異国感があるというか、とても特徴的な見た目をしていますよ」と語るのは学芸員の金代さん。大学時代はアフリカ地域の研究をしていたという彼の軽妙な解説は博物館の名物になっている。

「私は是川の土偶を見るたびに、アフリカで見られるような特徴を備えていると思います。元々蝦夷とされていたこの地域の文化圏は独特で、海北やユーラシア大陸とも交易をしていたそうです。そういった背景が他の地域とは違う、このなんとも面白い造形を生み出したのかもしれないですね」。

 是川を後にして市内中心部にほど近い根城に向かう。根城は中世に造営され、八戸が盛岡藩領になるまでこの地域の拠点であった平城だ。1940年代から考古調査と復元が進み、現在では往時を偲ぶ復元の館を楽しむことができる。

華谷さん曰く「中世期の復元建築として、ここまで大規模に復元されたのは根城以外にないんですよ」だそう。300年間八戸地方を見守り続けた城の敷地からは、八戸の田園風景を一望することが出来る。

 華谷さんによると、根城の隣には八戸市博物館が併設されており、この町の郷土史を中心に、八戸と盛岡藩に関する展示も多いという。

 入館してみると、展示室はこじんまりとしているが、古代から近代に至るまでの八戸の歴史が過不足なく分かりやすく解説されている。また展示室の向かいにある休憩室からは八戸郊外を一望することもできる。


 見学を終え博物館を後にすると、外の照りつける太陽を和らげるように冷たい風が我々を包み込んだ。(続く)

 

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